コープ佐賀生協 くすの木12月号 さががすき 掲載記事

※本文は画像の下に載せてあります。 さががすき!!
日本の伝統美術工芸 截金きりかね           

■きりかね(截金)とは・・・
ほとんどの方々がきりかねって何?と思われるでしょう。截金は「仏像・仏画」の衣や装身具に、金箔を用いて線や円、幾何学模様をほどこした装飾技法のことをいいます。
截金の歴史は古く、6世紀頃飛鳥時代に大陸より仏教美術とともに伝来し、今もその技法が伝えられています。
その技法は、まず金箔を数枚焼き合わせ、鹿皮が張られた台にて竹刀を使い切断します。その後、両手に持った二本の筆を使い、切られた細い金箔を一筋ずつ、布のりと膠を用い丁寧に貼っていきます。直線や曲線を表現するだけでなく、菱形や丸形にくり抜いた金箔にて幾何学模様や文様を作り出し、優美な装飾を生み出します。
しかし細かい作業のため集中力と根気が必要とされ、多大な時間を要する技法なのです。

■きりかね(截金)との出会いは・・・
私が高校生の時です。母の伯父である江里宗平氏(故)が、仏師として京都で工房を開いていましたので、修学旅行の合間に訪ねたとき「京都に出てけえへんか」と誘われたのがきっかけでした。その後、京都の短大へ進み、染色を学ぶかたわら、伯父の息子さんへ嫁いでいた江里佐代子氏(故)(人間国宝:截金技法)から截金を学びました。短大卒業後は伯父の工房で働き、約6年間、仏像截金の職人として仕事に没頭しました。あっという間に月日が過ぎていましたが、私にとっては細やかな截金作業も、楽しい時間だったのです。

■結婚を機に帰郷・・・
結婚を機に佐賀へ戻りましたが、截金を続けたい思いで道具一式を京都から持ち帰り、制作活動を続け、県展など展覧会にも出展していました。二人の子育てのため、制作を中断していた時期もありましたが、その後復帰、2006年には日本画家の馬場良治先生から截金の依頼を受けるご縁をいただきました。依頼内容は、京都大原三千院の往生極楽院(国重文)復原壁画に含まれる截金施工でした。翌年にも依頼をいただき、京都宇治平等院鳳凰堂(国宝)の柱絵復原截金も施工させていただくなど、名誉ある仕事に従事させていただいたことに深く感謝しております。

■新しい試み・・・線と幾何学模様から描く截金へ
4年程前、大分県の浄土寺様より、来迎殿仏間に立てる板戸に截金を施したいとの依頼を受けました。板戸12枚「雲水に浄土六鳥図並びに蓮華図」を截金のみで描かせていただきました。浄土寺様からは「極楽浄土に住む六烏と蓮を表現してほしい」という依頼でしたが、これまでの截金技法と絵画的に創作する技法を合体させる新たな技法への挑戦でした。雲と水の流れをこれまでの技法で施し、浄土六鳥と蓮華を絵画的に描くことを試みました。
材料は、金箔だけではなく銀箔(色箔)、プラチナ箔を用い、それらを裁断するだけでは
なく、粉にした砂子を蒔くなど表現方法を工夫した作品となりました。多くの資料を収集
することから始め、イメージを創造していき、デザイン構想を含めると3年がかりの大作
となりました。この新たに生まれた技法から、仏画を描くなど世界観が広がりました。日々
勉強であると改めて思ったことでした。

■そのほかの作品・・・
こういった大きな仕事ばかりでなく、釘隠しや(なつめ)、帯留めやブローチといった小物も作っています。意外なご依頼では、ゴルフのクラブヘッドに截金を施したこともあります。これからも、いろんなものに截金が施せないか、常に挑戦したいと思っています。

■これから・・・
 昨年10月頃、十数年ぶりに染色家の小川康彦先生(佐賀市在住)を訪ね、制作した作品を見ていただきました。しばらく中断していた展覧会出展について意欲を伝えご相談したのです。先生は是非出しなさいと言ってくださり、作品のデザインなど、ご教授していただきました。お蔭さまで、第62回佐賀県展で佐賀銀行文化財団賞、第35回日本新工芸展ではNHK会長賞をいただきました。やはり賞をいただきますと励みになり、次の作品制作への意欲につながります。
展覧会を通じ、截金を多くの方々に知っていただきたいと思います。また私の作品が、100年後、200年後の未来へ、伝統美術工芸として残ることを願っています。

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